課題名   活性炭の作製と評価
生徒氏名  西山 紗織  中田 みなみ  谷岡 奈紗  関根 祐子  大野 麻衣子
指導教官  成田 彰
 
1.目的
 健康や環境問題がクローズアップされている今日、新聞などで活性炭がよく話題にのぼる。それは、活性炭が有する無数の細かい穴が様々な物質を吸着するという性質を持っていることから、環境汚染物質を取り除く効果があるからだ。例えば、冷蔵庫や靴箱のいやな臭いをとる脱臭剤や水中の有機物質や重金属イオンを取り除いたりする浄化剤、空気清浄機のフィルターとして使われている。そこで、このような面白い性質を持つ活性炭を不要になったものから作り、その性能を調査し、できれば市販のものよりも優れた能力のものを作ることを目的とした。
 
2.概要
 みかんの皮、コーヒー殻、シュレッダーごみを蒸し焼き処理により炭化する。炭化した試料を環状の電気炉によって、二酸化炭素と窒素の混合ガスを流しながら、700?1000℃で反応させ、賦活処理することで活性炭を得た。
 これまでは塩化亜鉛による賦活処理を行ってきたが、製造工程の最後にこの塩化亜鉛の洗浄があり、その良否が酢酸の吸着量評価に大きな影響を与えていた。そこで今回は二酸化炭素による賦活処理を試みた。この方法では、次のような化学反応式により
 
二酸化炭素と炭素の部分反応によって、微細孔(直径10?200Å)が生成し活性炭が製造される。
 作製した活性炭は、走査型電子顕微鏡による表面形態の観察、酢酸の吸着量の測定および河川水の浄化能力を過マンガン酸カリウム消費量によるCOD、原子吸光分析法による硬度の測定によって評価した。
 
3.実験
3-1 活性炭の作製
3-1-1 みかんの皮とコーヒー殻の炭化
 (1)試料(みかんの皮、コーヒー殻)を十分に乾燥させる。
 (2)それぞれの試料を、ふたの中央と側面に小さな穴を開けた茶缶に詰める。(中央の穴はガ   ス抜き用、側面の穴は温度モニター用)
 (3)バーナーを2本用いて茶缶をまんべんなく加熱する。
3-1-2 紙の炭化
 (1)シュレッダーごみを細かくきざみ、10%PVAのり溶液を加え、よく混ぜる。乾燥させた後、2トンの圧力をかけプレスし、ペレットを作る(径30×10mm程度)。
 (2)できた試料を環状炉に入れ、窒素を流しながら350℃で30分の熱処理で炭化させる。
3-1-3 賦活処理
(1)炭化させた試料を、窒素と二酸化炭素(体積比1:1)を流速50ml/minで流しながら850℃(昇温速度10℃/min)で10分熱処理することで賦活する。
(2)活性炭を取り出すと塊になっているので乳鉢で試料を粉末状にする。
3-2 酢酸の吸着実験
 (1)乾燥した三角フラスコ5個に、それぞれ0.4、0.2,0.1,0.05,0.025Mの酢酸水溶液を50ml    ずつ採取して入れる。
 (2)活性炭1.5gを電子天秤で量り取り、酢酸の入っている各三角フラスコに入れ栓をする。    これを25℃恒温水中に、約5分間隔で振りながら30分間浸す。
 (3)30分後、酢酸水溶液をろ過し、活性炭と酢酸水溶液を分離する。
 (4)ボトルに残っている吸着前の酢酸水溶液を適当量分取し、その濃度を0.1M水酸化ナト    リウム水溶液で滴定し求める。
 (5)ろ過した吸着後の酢酸水溶液についても同様に滴定し、その濃度を求める。
 (6)(4)(5)より吸着量を求めグラフ化してフロイントリヒの吸着等温式を求める。
3-3 河川水のCOD測定による評価
 (1)河川水を採取し、ろ過する。
 (2)倍に希釈し、そこへ活性炭1.5gを入れ、これを25℃恒温水中で約5分間隔で振り    ながら30分間浸す。
 (3)30分後、河川水をろ過し、活性炭と河川水を分離する。
 (4)分離した河川水に、硫酸銀1.0g、6M-硫酸10ml、過マンガン酸カリウム水溶液10ml    を加える。
 (5)沸騰した湯煎鍋中で30分加熱する。
 (6)シュウ酸ナトリウム標準溶液10mlを加える。
 (7)湯煎鍋で60〜70℃になるように加熱する。
 (8)過マンガン酸カリウム水溶液で滴定する。
 
  a:試料水滴定値(ml) V:試料水量(ml) C:KMnO水溶液(mol/L)
3-4 河川水の硬度測定による評価
 (1)Ca2+測定用に3-3(3)の溶液10mlを100mlメスフラスコに取り希釈する。
 (2)Mg2+測定用に(1)の溶液10mlを100mlメスフラスコに取り希釈する。
 (3)原子吸光分析装置で測定する。
 
4.結果
4-1 炭化処理の温度変化
 
 
 
 
 
 
 
4-2 SEMによる表面観察
炭化:  みかん         コーヒー          紙
賦活:  みかん         コーヒー          紙
   
4-3 酢酸の吸着
フロイントリヒの吸着等温式  :単位質量あたりの吸着量
 
  市販 ミカン コーヒー
0.525 0.452 0.468 0.371
0.587 0.238 0.248 0.239


 
 
4-4 河川水の評価
  河川水 処理水      
    みかん コーヒー 市販
COD 11.6 10.0 7.7 6.3 6.0
硬度 772.2 481.4 379.2 401.8 355.9
Ca2+ 195.2 153.4 98.7 198.1 96.5
Mg2+ 577.0 328.0 280.4 203.7 859.3
 
5.考察
・それぞれの活性炭の表面の形態は、肉眼でも電子顕微鏡観察によっても、賦活前後ではあまり変化が見られない。これは賦活処理が炭化によってあいた穴の中にCOが入り横穴をあける形でより複雑な形態を作るからだろう。
・複雑な形態を持つ物質は、炭化後もその形態が保持されるから、活性炭の材料として向いているのではないか。
・各試料を粉末状にする際、細かくした方が表面積が大きくなり吸着量が増えるので、吸着量の評価をする場合、粉砕の仕方に注意しなければならない。
・「みかん」は酢酸の吸着量は良いが、CODの値はあまり良くない。これは、河川水中のCODが微生物などの比較的大きな有機体の分解に要した値も含まれており、「みかん」の表面にあいた穴の大きさに対して、小さな酢酸分子とは異なり、それらの物は大きいので、あまり吸着できなかったためではないかと考えられる。
・「コーヒー」は酢酸吸着量が良くないが、CODの値は「みかん」より良い。これは、表面にある比較的大きな穴に微生物や有機物質の塊を捕らえることができたためと思われる。「紙」についても紙の繊維が折り重なるように編み目の構造をしているので、同様の理由でCODの値が小さくなったと言えそうである。
・「紙」は、原子吸光分析をしたところ、元々河川水に含まれているCa2+の量よりも増加した。これは、試料にCa2+が含まれていて、水に溶け出したためだと思われる。
 
6.今後の課題
 ・試料を賦活する際に、全体にガスが流れるようにする。
 ・吸着実験において、賦活前のデータをとり、賦活することによって活性炭の性能がどれ  程良くなるか、比較する。さらに、コーヒーに関しては、コーヒー殻そのものに吸着能  力があるようなので、処理をせず、そのままの状態でも行ってみる。
・二酸化炭素の流量があまり正確でなかったので、CO用の流量計を用いて確認しながら賦活を行う。
・紙から溶出する金属を分析する。
7.参考文献
  島田勝広他  東京都立産業技術研究所研究報告 第2号 (1999) 113~117